東京大学物性研究所では計算物質科学の発展のためにスーパーコンピュータ・システムB(通称 sekirei, 2015年7月より運用開始)とシステムC(通称 enaga, 2018年1月より運用開始)を広くコミュニティに提供し、スーパーコンピュータの全国共同利用施設としての活動を展開している。本シンポジウムは共同利用スパコンの利用者による成果報告会と、計算物質科学研究センター(CCMS)の活動報告会を兼ねた合同研究会である。システムBの運用は4年目を迎え、多数の研究成果の創出が期待されるだけでなく、次世代機導入に向けた議論が必要な時期にある。またシステムCは稼働から1年ほどが経過し、本格的な活用が期待されている。計算物質科学研究センターの活動としても、2019年度はポスト「京」プロジェクトの最終年度にあたり、これまでの成果を総括し、今後の展望を開くべき時期にあたっている。
ポスト「京」に代表されるエクサ級の計算機が数年のスパンで登場すると予想され、益々、超大規模計算やハイスループット計算がより身近になると考えられる。また機械学習やデータ駆動科学が隆盛しており、その一方で量子計算機への期待も高まっている。これらの最近の発展を踏まえ、これからの10年で計算物質科学にどの様な新展開が期待できるのか、また期待だけでなく、現状を正しく理解し、どの様な方向で計算科学の研究を展開していくべきか、議論する機会としたい。合同研究会の終わりに「計算物質科学の新展開」と題したパネルディスカッションを設け、パネラーと参加者で将来を展望する。